バブル景気と呼ばれた頃には、若者は暗く目に悪い色の光のダンスホールで踊ってるだ
けでも仕事に就く事ができたという。僕の祖父は『本当に良い時代だった』とその当時を
語るが、仕事を遊んでやっているような人間は何を人生の目標に生きていたのだろう。別
に仕事が人生の生きがいとは言わないが、総じてその頃の若者のやっていた事と言えばダ
ンスホールで踊る事だったようで、もしかしたら当時の若者達は全員ダンサー志望だった
のだろうか。確かにそれなら、その数年後に現れたオヤジダンサーズというのも納得行く
気がする。
 ともかく、今はそんな時代ではない。2010年である今年の大学生の就職内定率は5
0%ジャスト、大学卒業者の半分はプータローという時代である。かく言う僕も、来月に
は大学を卒業するが就職の内定は決まっていない。
 こんな状況だが、若者達は踊っている。僕は踊っていないが、彼らは今日も踊って
いる。もっともダンスホールは光の当たる健康的なダンスホールになったが。
 
 ダンスホールでは今日も大学生が踊っていた。数人の大学生が目を虚ろにして踊ってい
る。BGMは彼らのうめき声にも聞こえる声。目は虚ろか、もしくは生気が感じられない
ような目。
「あっひゃっひゃ、もう駄目だ〜」
 一人の男が笑いながら、ダンスホールを飛び出した。

 ドス、と重い音が僕の背後から聞こえた。振り向くと、そこには人が一人倒れていた。
また、ダンスホールから飛び降りた人が出たようだ。うちの大学でも今月に入ってもう
10人目である。というか、一日一人はあそこから飛び降りている。つまり、自殺して
いる。
 しかしそんな事には誰も目をくれない。皆『いつもの事だ』で済まして歩いていく。
5年位前なら自殺の増加は立派なニュースになったが、今じゃ大学生が飛び降り自殺す
るのは当たり前、とさえ言われる時代なのだ。
 しかし、死んでどうなるというんだろうか。確かに就職こそできなかったが、バイト
なら探せば幾らでもある。死んでしまったほうが葬儀だの何だので面倒な金がかかる
のに、彼らの最終手段は決まって自殺である。親も苦労する。
 皆、何がしたくて大学に入ったんだろう。一つの壁にぶち当たっただけで諦めて死ね
るような、その程度の事をしたくて大学に入ったんだろうか?

 今日も、大学の屋上はダンスホールとなっている。そして皆、ダンスホールから弾き
飛ばされないよう必死になって、何かにしがみついて踊ってる。
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