夏は暑い。
そんなことは当たり前のことである。
「あー、今日もあっちいなぁ」
友達の健太が太陽を睨みつけながらそんな事を言う。
「仕方ないじゃん。 夏なんだしさ」
僕はそう言って、健太と並んで歩く。
道路は暑さで揺れて見えた。大きな水溜りも見える。夏にだけできる、インスタントな水溜りだ。ただし、飲めない泳げない、何歩歩いても着かない。
「とりあえず、太郎達が待ってから急ごうぜ」
健太はそう言って、走り出した。
僕も走った。
暑くて汗が流れ出て、被っている帽子に染み込んでいく。
シャツにも染み込んでいく。
でもそんなことは気にせず、走った。
学校で野球をして遊んだ。気がつけば夕方、みんなが家に帰っていく。
僕も、家が近い健太と一緒に帰る。
帰りに駄菓子屋により、30円のゼリーを一緒に食べることにした。
「おまえさ、将来何になりたいって言ってたっけ?」
健太が僕に聞いてきた。
「僕は、発明家になりたい。 そして、色んなものを作りたいんだ」
「いいなぁ、俺もなりたいけど……頭悪いからなぁ」
健太は、少し寂しそうな顔をした。
そこで、僕の意識は途切れた。途切れた意識は、別の意識に繋がった。
そんな気がした。
「お客様、予定の時間が過ぎましたが?」
目の前には、スーツ姿の男がいた。
「……もう少し、延長をお願いします」
俺はそう頼んで、男に諭吉を数枚手渡した。
「かしこまりました。 では、続きをどうぞ」
そこでまた俺の意識が途切れた。
『ノスタルジーワールド(1時間15000円)』
そう書かれた看板の前で、二人の男が話していた。
「『懐かしい少年時代』を金で経験する時代が来るとはなぁ」
「仕方がねぇさ。 学校なんてのは無くなって今はインターネットスクール、駄菓子屋は体に悪いものばかり売ってるって言われてどんどん潰されて、ここ数年、外で子どもが遊んでる所なんて見た事が無いぜ」
『作り物のノスタルジー』
これが俺達、今の人間が唯一見る事の出来る懐かしさとなった。
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