頭の中で一本、何かが切れた。 スイッチの切り替わりか、それとも大事な神経が切れたのか。 確かに母さんに思い切り殴られたので、そういうこともあるかもしれない。 「あんたなんか、生まなきゃ良かった!」 母さんが叫んだその言葉の意味が、僕には分かる。そりゃそうだ、母さんは僕を一生懸 命育ててきたのに、努力の甲斐なく、僕は人から会社から金を借りてギャンブル狂い生活。 その借金は、働かない僕が払う。 矛盾だ、払えるわけが無い。必然的にそれは母さんへとスライドしていく。 「うちのどこに、600万の借金を払える余裕があるってのよ!」 パチンコから始まり、パチスロへ。負けた日は『負けを取り戻さなきゃ』とまたすぐに 打つ。 次第にそんな自分に嫌気が差してくる。母さんが寝てる横で母さんの財布から金を取る 自分に。でも打つ。鬱になる。でも打つ。鬱になる。以下、同じことの繰り返し。 気が付けば母さんの財布からでは大金が取れないので、サラ金に手を出した。よくもま あ、無職童貞の僕に金を貸したものだ。それも利息込みで計600万。 「全部、あんたのせいよ!」 頭の中で一本、何かが切れた。何だろう。 こんな時はどうしたらいいんだ、もう自殺しかないのか。自殺は何度も考えてきたけど、 いつも怖くてできなかった。きっと、たった一歩踏み出す勇気さえあれば僕は楽になれた。 一歩踏み出す勇気、それはどうやって手に入れられるんだろう。どうすれば。 そうだ、母親を殺そう。母親を殺せば、きっと分かる。分かる気がするんだ。 包丁を持って、母親の前に立つ。母親は泣いてる、そして僕を止めている。 一歩踏み出す、勇気だ。 僕は一歩踏み出して、包丁を母親の頭に突き刺した。けど、一回じゃ刺さらない。 一歩踏み出す、勇気だ。 もう一回、力を込めて刺す。まだ、浅い。 いっぽ踏み出す、勇気だ。 刺さった。死んだ。これで僕も自殺できるに違いない。 だけど実際、僕は自分自身に包丁を付きたてる事はできなかった。怖い、怖い。 結局僕は警察に捕まった。 神様のお告げが聞こえてきたから、刑務所で、包丁で同じ部屋の奴らを3人刺した。 神様、これでいいの? あれ、神様って誰だっけ? まぁいいや、みんなころそう。それでいいや。 みんなしんだ?じゃあ、えーと、なんだっけ。 なんだっけてなんだっけ、もういいや。なにがいいんだっけ。 あ、思い出した。パチスロ打って早くお金取り戻さなきゃ。